木曽駒ヶ岳 (後編) [おでかけ]
振り返ると、昨日歩いてきた道が見渡せます。
中央奥のとがった山が宝剣岳。
その左手前、稜線が弓なりに低くなっているところが乗越浄土で、こちらから見てその裏側、千畳敷カールから上がってきました。
宝剣岳の前を横切って赤い屋根の山小屋の裏から、中央右のなだらかな中岳を越え、右端の青い屋根の小屋に泊まりました。
今日は右方の木曽駒ヶ岳を越えて尾根を左手前に歩き、一度下に下ってから赤い屋根のところに左下から登り返します。
この尾根には猿が多い…。
後ろで一匹ギャーギャー鳴いているのを無視して岩の小ピークを越そうとしたら、ピークの裏側目の前にもう一匹いました。
近すぎて写真撮りたかったけど、レンズを向けるのはでかい眼でにらむようなもので、向こうにひどく嫌がられるとか。
目を合わせるのもダメ。かと言って逃げるのは逆に攻撃を誘うのでダメ。どうしたらいいんだ。
後ろからさっきのやつが来たりしたら囲まれてしまう。
気にしない振りをしながらゆっくり岩を越えて進んでいきます。
前の猿はそのうちどこかへ行ってしまいました。
ちょっと進んでから振り返ると、後ろの猿が4匹くらいに増えていました。
北アルプスが雲に見え隠れしています。
左の山は穂高連峰かな?
右は大天井岳とか常念岳とかのあたりっぽい。
ここらで別のルートから来たご夫婦と出会いました。
猿の集団が気になるので一緒に歩くことにします。
猿のさらに後ろからは団体客が来ているので、こっちには構わないとは思いますけど。
乗鞍岳。
槍ヶ岳や立山は雲で見えないようです。
話を聞くとこのご夫妻はけっこうあちこちに行かれているとのこと。
北アルプスも槍も何度も行っているそうです。すごいなあ。
「山酔いは慣れるわよ。私も初めは3000mに登るといつもげーげー吐いてたから」
慣れるものなのかあれ。
眼下に濃ヶ池が見えました。
なんとなく干上がりかかっているようにも見えますけど。
ここからまっすぐ下りる道はないので、先の分岐まで行ってから下りることになります。
クジャクチョウ。
学名Inachis io geisha。芸者のちょうちょです。
ゴゼンタチバナ。
標高3000m近い尾根歩きということで、気温は平地よりもずっと低く、風にも注意が要ります。
ってんで今日は風除けに上着を着て歩いていたのですが… 暑い。
上着を脱いで、日も高くなってきたので日焼け止めを使います。あと虫除けも。
やっと濃ヶ池への分岐点に着きました。
わかってはいたけどそれ以上に歩いた感じです。
もう猿はいませんが、ペースが似たようなものなので前のご夫婦と前後しながら歩きます。
実にいい天気です。かんかん照りです。
高所の尾根道には日陰がありません。
濃ヶ池。
鋭い宝剣岳が池に映っています。
透き通った流れがいく筋も流れ、花も多くきれいな場所です。
残念ながらここにも日陰がないので、流れでちゃぷちゃぷ遊んでから先へと進みます。
適度な風があるのが助かります。
ミヤマクロユリ。
沢をいくつか横切ります。
この水、汲めると思います?
「あたしもそう思ったんだけど、上に山小屋があったんじゃないかって…」
あーそうだ。これはダメだ。
うかつにも水を1リットルしか持ってきていませんでした。
山小屋までは2時間ちょっとなので油断してた。
ゼリー飲料を2パック持っていますが、あれは水というよりエネルギー源だしなあ。
目の前に木のはしごが現れました。いよいよこれから登りです。なかなかの急登っぽい。
やっとこさ大休止をとることにしました。
場所を見つけてお弁当を広げます。日陰はないけど仕方ない。
お弁当は梅干し、昆布、卵焼きにから揚げ、焼き鮭など、見るからに山歩きにうれしい内容です。佃煮とかしょっぱいものがすごくおいしい。
ゼリー飲料も1パック摂り、登りに備えます。
しばらく休んでから出発。
長袖のシャツもここで脱いで、日焼け止めをまた塗りました。
さて登るぞ。
ふー、ふー。ひいはあ。
ひとしきり急な箇所を登りきって平らな場所に出ました。
ここが駒飼ノ池のようですけど、このときは気にする余裕なし。
前方、山小屋までまだ登りがありますが、ここまでの急登に比べたらもう核心は抜けたと言っていいんじゃないかな。
前には団体さんがいて、長く伸びた隊列で登っていっています。
後落しているのはガイドさんらに付き添われた女の人で、よほど消耗しているのかえずきながら歩いていました。
それを追い越し、ゆっくり登り、また前の人たちに追いつきます。
「きつい登りですねー」たまりませんねー。
「これ本当に入門者コースなのかしら」あはは。空気が薄いし日照りがきつい。
「あなたうちのパーティーじゃない人でしょ?どうぞ先に行って下さい。(前のメンバーに向かって)後ろからひとり来ますよー!」うへ、追い越せる体力なんてないですって。
さっきの駒飼ノ池のあたりが見下ろせます。
あの絶壁みたいになってるところの向こうから登ってきたわけです。
ともあれあと少しで山小屋です。
ついたー。
すぐに山小屋に飛び込んで冷たい飲み物を補充します。やれやれ。
乗越浄土まで来ると、観光の格好をした人が一気に多くなりました。
手ぶらでペットボトル1本持って来ている人や、コンパクトカメラを取り付けた三脚だけを手に持って登ってくる人も見かけます。
ずっと向こうに濃ヶ池が見えました。
地図だと平面ですけど、実際に見るとやっぱり山ですねえ。
今日は宝剣岳もはっきり見えます。
山頂の岩の上に人が立っています。自分には無理です。
標高3000m近い稜線上で凧揚げができるとは。
ひとしきり休んでから、千畳敷へと下り始めます。
あまりのんびりしていると、帰る人たちのロープウェイ待ちに巻き込まれます。
下のほうには少し雲があるみたい。
乗越浄土直下の狭い道に、ちょっとした人だかりができて渋滞になっていました。
男の人がひとり、道に横になっています。
通りざまに耳に入った話によると、高山病で倒れて数m滑ってしまったらしく、通りすがりのパーティーが介護と救助要請をしているところでした。
今日は本当にいい天気で、登山道を歩いている人がぞろぞろと見えます。
気がついたら腕が赤くなっていたので、遅いかもしれないけどもう一度日焼け止めを塗りなおし。
登りは大変でしたけど下りは速いです。ストックがあると岩場での下りが本当に助かります。
女の人ふたり組が、登高を断念して引き返すところの会話が耳に入りました。
これで2回目だとか。空気が薄いしやっぱりきついよね。
「あの向こう側がどうなっているのか、見てみたかったのに…」
そう言われてみると、確かにあの壁を乗り越えた先の景色が見たくなるようなかっこうです。
千畳敷駅のスピーカーは相変わらずロープウェイの運行状況や午後の雷の注意についてアナウンスを続けていますが、急に違うことを言い始めました。
「乗越浄土付近の皆様へお知らせします。これより登山者救助のためヘリコプターが飛来します。ヘリコプターが来ると強い風が吹き、砂利なども飛んできます。係員の指示に従って退避して下さい。」
千畳敷カールの散策路では、観光客の人たちがそれを聞いて騒然としています。
さっきの倒れてた人の救助だねー。
小屋がすぐ近くだから助けはすぐ来るし小屋まで担ぎ上げるのは問題なさそうだけど、高山病だったら下ろさないといけないからどうするんだろうと思ってました。
ヘリを使うと数十万もお金がかかるとか。
こんなところでも標高3000mの高山なんだし、気をつけないとね。
保険に入っていれば、ヘリ代も出るみたいです。
帰りのロープウェイにもすんなり乗れて、千畳敷を離れます。
バスを途中で降りて入浴施設でお風呂に入りスッキリ。
近くに有名なソースカツ丼屋さんがあるのですけど、なんかいまいち食べる気がしなくてパスしておきました。そう言えば昨日からソースカツばっかりだったから無理もない。
さて自分もこれで無事、日本アルプスデビューを果たせました。
めでたしめでたし。
ではなくて、この夏の締めくくりはまだ別に考えていたりします。
その時もこんなに天気がいいといいなー。
帰ったら、この日は全国的な猛暑が記録されていました。
山の上でも暑いわけだ。
木曽駒、素晴らしいですね!
アルプスの名に偽り無し。
実は私も以前登ろうとした事があるのですが土砂降りで数歩先も見えない状態でやむなく断念。
こんなに晴れ渡った登山、うらやましい限りです。夜空も美しい!
猿なんかもいるんですね〜。
by Sakuya2634 (2011-08-15 22:51)
せっかく来たのに土砂降りは残念ですね。
山小屋泊まりで星が見えたのはこれが初めてです。
天気はしょうがないので、数行けば晴れに当たる戦法を敢行中です。
猿、ちょっとこわかったですw
by ひさみね (2011-08-16 07:29)