燕岳~常念岳 (前編) [おでかけ]
今回は、北アルプスの入門コース、燕岳から大天井岳を経て常念岳へ、山小屋2泊の縦走に行ってきました。
この夏、梅雨明けのリハビリ陣馬山から始まって、富士山での高度順応、富士山を除けば初めての高山となる木曽駒ヶ岳と歩いてきたわけですが、目標としてはそれらの前から燕岳が頭にありました。
初心者でも行ける山とは言っても北アルプスは北アルプス。これまで高山の経験はほとんどありませんし、山中で2泊というのも初めてです。
しっかり備えて、楽しい山歩きにしよう。
燕(つばくろ)岳は北アルプスでも人気の高い山ですが、槍ヶ岳や穂高連峰といった主役級の山々に比べれば知名度はちょっと劣るかもしれません。
自分がその名を覚えたのは3年ほど前のお絵描きチャットのらくがきででした。
お手本に開いていた白と緑の稜線が伸びる写真。どうも燕岳というらしい。きれいだねえ。
当時はまだ山歩きはしていませんでしたし、縁はないとは思ったのですが。
その後NHKの登山入門で、雨と強風の中での燕岳登山が放映されました。
今では一応自分も富士山や低山をちょこちょこ歩いてるので、全く手が届かない山というわけではないんじゃないのかなと思い始めました。
さらにコミックエッセイ『山登りはじめました2』で描かれたのが燕岳から常念岳への縦走コース。
これと全く同じコースにすることにしました。
そんなんで、徐々にステップアップしていくようなこの夏の予定を決めたわけです。
土曜日の夜行バスでJR穂高駅に到着。
やっぱり夜行では眠れないなあ。
天気は小雨。
この週は台風が2つ接近してきている上、秋雨前線も本州の上をうろうろしていていました。
勤続ウン年に一度の特別休暇を使ったので候補日1週間のうちどこかは晴れるだろうと踏んでいたのですが、これでは天気が良くなる材料がない。
後になるほど不利になるのはわかりきっていたので、行程をめいっぱい前倒しし、土曜移動、日、月で山小屋泊、火曜に下山ということに前日決めました。もたもたしていると台風がやってきます。土日は小屋が混むのでできれば避けたかったんですけど、天気にはかないません。
平地の予報では日、月は「曇り時々晴れ」。
山の天気は平地とは違いますが、うまく行けばその「時々晴れ」に当たらないとも限らない。
穂高駅で路線バスの始発を待ち、登山口の中房温泉へと向かいます。
ある程度覚悟していたとは言え、いきなり雨の中の登高になるのかなあ。
登山口。
晴れてるよ!ありがたい!
持ってきたパンで朝食を摂り、準備運動をしてからいよいよ歩き始めます。
バスの中で少し寝れたし、テンションもばっちりです。
ヤマアカガエルかな?
登山道にぴょんと飛び出してきました。
この登山ルートは、北アルプス三大急登のひとつとされています。
中房温泉から尾根上の山小屋まで標高差1180m、コースタイム4時間5分。
急登と言っても道はしっかりしていて無茶な登りをさせられるわけではないので、ゆっくり歩けば問題ないようです。
ルート上には30分置きくらいの間隔でベンチが設置されていて、休憩ができます。ふぃー。
確かによく整備された道なので、ちょっと見た目には高尾山だと言われても信じそうです。
でも登りがずっと続いてるし、空気も薄くなってくるしでやっぱきついです。
最も急な箇所を登りきり、合戦小屋へ。
ここの名物はスイカ。
かぶりつきたかったですけど、後でおなかにきたら困るので豚汁とパンだけにしておきました。
次回はスイカ食べるぞ。
小屋の脇には合戦尾根の名の由来となった伝説が書いてありました。
なんだか『俺屍』の朱点童子みたいだと思いましたが、この鬼さん、実際は普通の地元の人だったのね。
森林限界を越え、周囲の木々の背も低くなってきました。
あたりはすっかりガスの中。そうだよね、そうそう都合よく晴れるもんじゃないよね。
雨に濡れても耐えられるように、今回は着替えを余分に詰めてきています。
2泊の行程ということで行動食も多めに持ってきました。
ここの歩きには関係ない余分なものを置いてきたりもしてるので、ザックの重さはそんなには増えていないはず。
水は各所で補充できますが、木曽駒での教訓から少し余裕をみて持っておくようにします。
ひいはあ。1日目の目的地、燕山荘に到着~。
コースタイムよりもずいぶん時間がかかってしまいました。
燕山荘は、この高所にありながら喫茶室でケーキを楽しめたりもする人気の山小屋です。
さっそくチェックイン。
本日の寝床です。
寝袋タイプの寝具で、ひとり1畳のスペースがもらえました。
これなら割りとゆったりです。
時刻は午後2時半。
雷を避けるため、山では午後2~3時には行動を終えるようにするのが無難です。
燕岳山頂までは往復1時間の距離。さて。
ガスがさーっと薄くなって、燕岳への稜線が見えてきました。行こう!
要らないものを寝床に置いて、水と行動食と雨具や防寒着だけをザックに入れなおして軽くします。
燕岳の尾根の上には、斜めに生えた板みたいな形の巨岩がにょきにょき立っています。
その間を縫うようにして山頂を目指します。
白い砂の上に、高山植物の女王コマクサが咲いていました。
コマクサのシーズンは終わりかかりでも、まだきれいな花がけっこうありました。
これらの岩は硬い花崗岩で、周りの岩が風化した後に残ったものなんだそうです。
燕岳の景観を特徴付ける白い砂も、花崗岩の砕けたものなんだとか。
燕岳登頂!標高2763m。
山頂はごつごつした岩で、一度に何人か立つと狭くなります。
このとき山頂にいたのは、お子さん親御さんおじいさんの三世代ファミリー。すごいなあ。
山荘のほうを振り返ります。
これだこれ。
この、白い砂とハイマツの緑で彩られた、向こうへと伸びていく稜線。
これが見たかったんだ。ここを歩きたかったんだよ。きれいだなあ。
ふと日が差して地面に影が映りました。
もしや?
岩の上に立って太陽と反対方向、下を見下ろします。
ブロッケンの妖怪だ!
霧の水滴に陽光が反射してできたひとりサイズの小さな虹と、その霧に投影された自分自身の影でこんなふうになります。
昔の人が見たらそりゃびっくりするよなあ。今でもびっくりするけど。
見れたらうれしいなと思っていましたが、あっさり見られるものなのね。
山頂はあまり広くなく下からはまだ人が上がってくるので、適当に引き返すことにします。
小屋へと向かう間にも、日が差すたびに眼下にブロッケン現象が出ていました。
傍から見ると、みんなで並んで東側を覗き込んでばたばた手を振ったりしているのがおかしいです。
戻ってきました。
小屋の前の人気者、山男の像さん。
喫茶室のケーキも食べてみたかったけどもうすぐごはんだし、ジュースだけ頂いてからひと休みします。
晩御飯。
同じテーブルの、明日自分と同じルートを歩くおじさんや、上高地から歩いてきた女の人、お母さんと娘さんらとおしゃべりしながら頂きます。
この日はオーナーさんが不在で、名物のアルペンホルン演奏会は行われないとのこと。残念。
食後、また表に出てみます。
相変わらずのガスの中で何も見えません。
おっ、ときどき西の空がぼんやりと明るくなったりします。
もうちょっとなんだけどなー。
昨夜寝れていないので、早めに寝床に引っ込みました。
まだ1日目だし、体力を温存しなければ。
「星がすごいきれいだよ!」
声が聞こえてきました。
あー。それは行かなければ。
他の人たちも表に出てきました。
ガスが晴れて天の川が見えています。
三脚を立てて写真を撮っている人もいました。
こんなときのために自分もミニ三脚を持ってきたのだ。
いて座南斗六星とさそり座。
やっぱりピント合わせが難しいなあ。
ディスプレイやファインダーでは星はほとんど見ることができないので、適当に無限遠ぽく合わせてはピンボケ写真を連発します。
今度ピントの場所を感覚で覚えられるようにできないかな。
しばらくするとまたガスが出てきました。
晴れ間が見れてよかったよかった。
今度こそ寝ることにしよう。
ここも標高2700mと空気が薄い場所です。
でもこのふた月でもう何度も高いところに行っているし、今回は乗り物ではなく登山口の1450m地点から自力で上がってきているので、さすがに山酔いの心配はなかったです。
明日の天気はどうかなー。
朝は晴れが期待できるんじゃないかな。
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