双六岳 三俣蓮華岳 (後編) [おでかけ]
双六岳山頂から三俣蓮華岳までは、コースタイム1時間25分。
戻りは、巻道を使えば双六小屋まで1時間40分。
現在9時45分です。
予定よりも30分以上早く鏡平を発ったにもかかわらず、既に15分のオーバーになっています。登りの遅さと写真タイムが響いてるのでしょう。
このまま行けば小屋に着くのは、休憩や遅れを加味すると14時くらいか。
11時には雷が鳴り出していた昨日のことが、どうも頭に残ります。
まあ今天気が悪いわけでもないのに引き返すのもあんまりですし、三俣山荘や巻道を使えばどうとでもなりますかね。
とにかく気をつけていきましょう。
先のほうはそこそこ見えています。
むしろガスの隙間から見えている底の黒い雲にいちいちびくつく自分。
双六岳山頂から下って、中間の丸山への登りにかかるころからまたガスの中に突入してしまいました。
出会う人も減ってきて、ついついペースが速まってしまいます。
ひいはあ言いながら丸山を登りきると、前方にまた鷲羽岳が姿を現しました。
三俣蓮華岳も目の前です。
最後の登りから、急にガスが晴れた感じになりました。
三俣蓮華岳、山頂です!バンザイ!
少し前を登っていたお兄さんとも、「ちょうど晴れましたね!」と喜び合いました。
左の山は黒部五郎岳。東斜面の大きなカールが見えています。
右の雲の向こうは薬師岳。北アルプス最深部の山々です。
眼下には、黒部川の源流が流れているはず。
山頂にはアゲハが2羽、ひらひらと飛んでいました。
中央の高いのは水晶岳。
どちらを向いても360度、深く山々が続いています。
視界を遮る高い山もなく、見下ろす下界の平野もありません。
こんなところは初めてだ。
山頂を踏んだらすぐに下りようかとも考えていましたけど、こんな景色を見せられてはそんなことできないでしょ。
右奥へと伸びる稜線が、ここまで歩いてきた道です。
目の前の山が丸山、双六岳は相変わらず雲の中。
帰りは左下、カール地形の中を行く巻道を使います。
こっちもすごい景色です。あそこを歩けると思うとまたわくわくします。
ひとしきり眺めを楽しんでから、山頂を下ります。
名残惜しいですけど、できるなら午後の雨には遭いたくないし。
巻道まで降りると、もう山頂はガスって見えなくなってました。
本当にいいタイミングでした。
ところでこの巻道コースもお花畑が続く道です。
地図には「お花畑」の表示が連続しています。
雪解け水の沢で冷たい水も補給できます。
ヒオドシチョウ?にしては何か違和感が、と思ったら、コヒオドシでした。高山蝶です。
この子は道案内のように先を飛んだり止まったりしてました。
向こうにしてみれば、「なんでこのでかいのはついてくるんだ」とか思われてたかもしれません。
アオノツガザクラ。
NHKの登山入門で田部井さんが紹介してたので覚えました。
チングルマかな?
白い花は見分けがつかないのであまり注目はしないのですが、「あたしも撮って」と言われた気がしました。
ウサギギク。
もうシーズンは終わりかかりでも、このあたりにはまだきれいな花が残っています。
巻道を向こうからやって来た人が、「この道で人に会ったのは3人目だ。あまり人のいない道なのかな」とか言ってました。
この先に行くとけっこう人いますよー。
なんかのタイミングでそんなふうになるときもありますよね。
道の両脇からぴーちく声が聞こえると思ったら、3羽のトリさんがいました。
大きめの白黒のが2話、小さめの茶色のが1羽。
白黒のはウソみたいです。首が赤いのがオス。つがいでしょうか。
茶色いのが後を追うようにハイマツから出てきて、仲良さげに3羽一緒にいたので親子かと思ったのですが、こっちは普通にイワヒバリのようです。
巻道の最後は、少しガレた登りになります。
苦労しながら下ってきた人が、「巻道だというから平坦だと思ったのに。帰りは稜線のほうを行こうかな」とか言ってました。
上り下りがあるのはほんとここだけで、あとはなだらかですよ。
稜線ルートはもっとアップダウンしてます。
双六小屋が見えてきました。
12時40分。結局予定よりも早めに到着することができました。
これなら山頂でもっとゆっくりしててもよかったのかなあ。結果論ですけど。
と、小屋に入って受付を行っていたら、小屋番さんが「雨が降ってきたー」と言っています。
あはは、やっぱちょうどいいタイミングでした。
「今日は混雑するので、布団2枚に3人になると思います」
あらー、せっかく休暇をとって来たのに、それでも混むのか。
荷物を整理してラーメンを頂いてひと休みしてると、ジャージ姿の中学校登山がぞろぞろ上がってきました。これかー。
先生がビールのジョッキ片手に、生徒さんらを夕食に誘導しています。あんた今仕事中だろ。
下界では大雨洪水警報が出ているそうで、ここ数日の大気の不安定さもあるので、下に一報入れておこうと携帯を取り出しました。
ですがあたりをうろうろしても、携帯のアンテナが一向に立ちません。
小屋のお姉さんにおすすめの場所を聞いてみたら、
「通話でしたら、東の樅沢岳のほうに3~40分ほど登ったところでできます。メールとかなら西の双六岳のほうに30分くらい登ったところなら大丈夫です」
それは、どちらも山頂までの半分ほど登らないといけないのか…。
試しに少し高いところまで行ってみましたがやっぱりダメで、また雨が降ってきたので退散です。
小屋には衛星電話があるのですが、通信の状態がうまくないらしく通話可能のランプがついていません。
うむー。ここのところどこに行っても携帯がつながっていたから油断してました。
さすが北アルプスの深部の一角です。
結局、寝床は布団2枚のスペースに2人で寝ることができました。
壁で仕切られているのでらくらく広々です。
隣のお兄さんは陽気な人で、寝床でいきなりメガネを壊したり、「自分のいびきが壁に反響するかもしれないっす!」とか言ったりして笑わせてくれました。
確かに最初は絶好調でしたが、満足したのかすぐに何てことのない音量に落ち着きました。
夜は一度起きだしてみましたがガスガスで星はなし。
3日目は早いのでちゃんと寝ます。
どうせ眠りは断続的で目覚ましは要らないでしょうが、念のため目覚ましを少し遅めにセットしました。
その目覚ましで目が覚めました。
危ない、危うく寝坊するところだった。
*
時刻は4時。
まだ真っ暗で、昇りくるオリオン座がきれいに見えます。
出発の準備をしている人たちは、西の双六岳や東の樅沢岳にご来光登山に向かう人たちでしょう。
自分は南へと下山していきます。
今日は昼前のバスに乗らないといけないのだ。
早朝なので念のため熊鈴を鳴らして歩きます。
同じ方向に歩く人も案外いました。
ヘッドライトでしばらく歩くうちに、空が明るくなってきました。
槍ヶ岳もよく見えています。
今日もいい天気になりそうです。
南には焼岳と乗鞍岳。
西のほうは雲海になっています。
前方には、登山道の表面の凹凸が影になって伸びています。
影?
ぴかー。
振り返ると、西鎌尾根の稜線からちょうど日が昇ってくるところでした。
きれいだなー。
小屋で頂いたお弁当を花見平で食べるつもりでしたが、当然のように朝露でベンチがべしょべしょだったのでやめておきました。
出るときに行動食を食べていたので、おなかは減っていません。
一応、チーズやらゼリー飲料やらでエネルギーの補給をしておきます。
弓折乗越から鏡平へ下ります。
弓折岳まで10分ほどで行けるとのことですが、時間に余裕がないので今回はパス。
鏡平山荘。
逆さ山荘です。本当にいい天気。
水を補充しつつ、せっかくなのでお弁当を少しつまんでおきます。
鏡池。
逆さ槍がきれいです。
水面には蒸気がゆらゆらしています。
焼岳と乗鞍岳。
登ってくる人たちともすれ違うようになってきました。
向こうはひいひい上っていますが、こっちは景色が良すぎて楽しすぎて、顔が緩んでいます。
シシウドが原。
昨日はずっとてっぺんの世界にいたのに、もう山々を見上げる場所まで下りてきてしまいました。
秩父沢。
どうやら寝坊したぶんは取り戻せました。
大休止して、お弁当を平らげます。おいしい。
ここからわさび平まで1時間、新穂高まではもう1時間。
わさび平小屋についたら、またリンゴを頂こうかな。
おお、トマトもいいな!トマトにします!
冷えてて水気たっぷり、酸味がさわやか!
塩も備え付けてありますけど、そのままがいいね!
あとは林道を歩くだけ。
遅れも取り戻して余裕を持って下山できました。
いやー、今回はいい天気でよかった。
昼に行動を終えるのは早すぎかとも思ったのですが、それがうまくいきました。
星が見れたのもよかった。
例によって気まぐれ動画です。
もうちょっと撮り方を工夫したほうがいいなー。
さて、こういう高い山には夏にしか行けないし、もちろん存分に楽しませてもらいました。
ところでこういう山登りはとても楽しくもある反面、計画も含めてそれなりの緊張も感じます。冒険的な要素もちょっとだけありますしね。
で、楽しんできておいて何ですが、今回準備をしながら思いました。
自然と触れ合うとか癒しを求めるとかいう意味では、思い立ってふらっと行く高尾山や御岳山も、北アルプスの山には決して負けてはいないんじゃないかと。
結局、やっぱりお山は楽しいね。
すばらしい大展望です!
鋭く射しこむ朝日も、紅く染まる黄昏も、満点の夜空も、全部いい。
山小屋泊でこそ出会える自然の一幕ですね。
そんな素敵な山行をブログで楽しませてくれるひさみねさんに感謝です。
by Sakuya2634 (2012-08-27 23:35)
布団1枚に2人で寝られるのも山小屋ならでは!
でもその程度、夜空や早朝の澄んだ景色を思えば何でもありません。いえ何でもないこともありませんが、まあ。
by ひさみね (2012-08-28 20:03)